新作オペラの舞台裏
2025-07-09 12:45:38

新国立劇場での新作オペラ『ナターシャ』創作の舞台裏を深掘り

新国立劇場にて開催されたトークイベント



新国立劇場で行われたトークイベント「新作オペラ『ナターシャ』創作の現場から」では、台本を担当した多和田葉子氏と司会の松永美穂氏が登壇し、多和田氏の創作過程やオペラの可能性について熱く語り合いました。このイベントは、ただの講演に留まらず、観客と演者の心の距離が縮まる貴重な機会となりました。

多和田葉子との対話



松永氏は、長年にわたって多和田氏と親交がある文学者。トークが始まると、彼女は「日本では小説家としてのイメージが強いですが、多和田さんは戯曲も手掛けています」と彼女の多才さを紹介しました。多和田氏の戯曲は、想像力をかき立てる詩的な言葉で構成されており、彼女自身も「言葉が詩のような感じで表現されている」と語ります。

彼女の戯曲デビューは高校時代に書かれたもので、最近刊行した『地球に散りばめられて』など、小説やエッセイでも多声的な語り口を追求し続けていると明かしました。多和田氏は、多言語で構成された戯曲や音楽とのコラボレーションから、新しい表現の可能性を感じています。

オペラ『ナターシャ』の誕生



2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻が始まったことを受け、多和田氏はオペラ『ナターシャ』の作成に深い影響を受けました。物語の主要なキャラクター、ナターシャはウクライナからの移民で、彼女のバックストーリーは戦争の悲劇に根ざしています。多和田氏は、原作となる小説『飛魂』が無音的な要素を持っていることが面白いとしつつ、「言葉の消失後に残る情念が重要だ」と強調しました。

今回のオペラでは、ナターシャと、アラトという日本から来たキャラクターが登場し、彼らの間で交わされる言葉は文化的背景の違いを反映しています。多言語での観賞体験が生まれるこのオペラは、観る人々に新たな感覚を届けることでしょう。

音楽の役割



多和田氏は音楽家の細川俊夫氏との出会いについても言及し、彼の音楽がどのようにオペラに生かされるかについて語りました。静寂を大切にし、そこから生まれる音楽のニュアンスが、オペラ全体に深みを与えると彼女は話します。松永氏は、細川氏の音楽が持つ独特の静けさが、言葉と共鳴しながら新たな情景を創り出すことに期待を寄せました。

現代問題への視点



多和田氏は、メフィスト的なキャラクターを取り入れることで、現代の問題に光を当てたオペラの構成にも賢明さが光ります。森林地獄や快楽地獄といった視点から、私たちが直面している環境問題や社会の課題を描くことで、観客にも深い考察を促す予定です。

このように、多和田葉子さんの手による新作オペラ『ナターシャ』は、幅広い文化や語源、音楽が交錯した作品として期待される存在です。

さらなる展開



イベントでは、サプライズゲストとして細川俊夫さんも登壇し、オペラ『ナターシャ』の魅力についてさらに多くの知見を共有しました。このトークイベントの全編は、YouTubeにて8月22日までの期間限定で配信中です。この機会に是非、アートの新しい息吹を感じてください。新作オペラ『ナターシャ』は、8月11日に新国立劇場にて世界初演を迎えます。


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