J-POPの進化と世界的成功を追った新書「音楽ビジネス」の魅力

2025年10月17日、株式会社クロスメディア・パブリッシングより新刊『音楽ビジネス』が刊行されます。本書では、急成長を遂げている日本の音楽業界について、テクノロジーとビジネスの変化に着目し、分析が行われています。著者の鈴木貴歩氏は、ユニバーサルミュージックでの経験を持ち、現在はエンターテインメントとテクノロジーの融合をテーマにコンサルティングを行っています。

コロナ禍がもたらした音楽界の変革

数年前、日本の音楽業界は「ガラパゴス」との言葉で表現されることが多かったです。その理由は、国内市場の活況にもかかわらず、ストリーミングの導入が遅れていて、国際展開の欠如が指摘されていました。しかし、コロナ禍によってこの状況は一変し、アーティストやレーベルは過去の楽曲を積極的にストリーミングサービスに解禁することになりました。その結果、SpotifyやApple Musicでは、様々な日本の楽曲が世界に届けられ、人々は新たなアーティストに出会う機会を得ました。

特に、YOASOBIの「夜に駆ける」や藤井風、Adoなどの新世代アーティストが急速に人気を集め、竹内まりやや山下達郎といったシティポップまでが再評価される現象が生まれました。このように、事前に生成された利用者の音楽嗜好を把握するアルゴリズムやSNSが相互に作用し、日本の音楽が国境を超えて聴かれる時代がやってきたと言えます。

新たな基準：ビリオンストリーム

かつて、音楽のヒットの指標は「ミリオンセラー」であり、100万枚の売上を誇ることが一つの証とされていました。しかし、現在は「ビリオンストリーム」という概念が浸透し、10億回のストリーミング再生が新たな成功の基準となっています。この流れにより、アーティストは単回消費ではなく、リピートされる音楽文化の中で勝負をかけることになりました。また、音楽再生数の増加は、広告やライブ、グッズの売上に直結するため、音楽産業全体の収益構造も大きく変化しています。日本のアーティストがこの新たな指標をどう活用していくのかが、今後の大きなテーマとして浮き彫りになっています。

テクノロジーの進化がもたらす変化

テクノロジーの進化により、自宅で誰もが高品質の音楽を制作できる環境が整っています。DTM（デジタル音楽制作）やAIによる作曲支援の普及は、音楽づくりを大きく変えました。加えて、アルゴリズムやプレイリスト戦略がアーティストの認知度向上や再生数に直結する重要な要素となりました。特に、TikTokのようなショート動画プラットフォームは、新曲だけでなく、過去の楽曲を再び注目されるきっかけを提供するツールとしても機能しています。

例えば、高中正義の楽曲やシティポップが、海外で一層大きな反響を呼び起こしたことは、こうしたテクノロジーの影響とも言えるでしょう。本書では、テクノロジーが音楽の制作から流通、マーケティングに至るまでの全プロセスを革新し、日本の音楽が国際的に広がるための基盤を築いてきた過程を詳細に解説しています。

どんな方におすすめなのか

この書籍は、音楽業界で働くビジネスパーソンや志望者、コンテンツ産業へ進出を狙う方、そしてミュージシャンや音楽愛好者にも適しています。音楽業界の複雑さや新しいトレンドを理解したい方々にとって、必読の内容となっていることでしょう。

本書の構成

1. 序章 202X年、日本の音楽が世界に響く理由
2. 第1章 新時代のヒットから学ぶ音楽制作の世界
3. 第2章 ストリーミングから学ぶ音楽配信の世界
4. 第3章 TikTokから学ぶ音楽マーケティングの世界
5. 第4章 フェスから学ぶ音楽イベントの世界
6. 第5章 インディーズに学ぶアーティスト育成の世界
7. 第6章 K-POPから学ぶグローバル化の世界
8. 第7章 カラオケから学ぶIPビジネスの世界
9. 第8章 歴史から学ぶ音楽ビジネスの世界
10. 第9章 AIから学ぶこれからの音楽ビジネスの世界

特別対談もあり、最新のAI時代におけるアーティストの可能性について多様な視点が持ち込まれています。