長崎の家族の歴史を音楽で紡ぐ
2025年の夏、東京で上演されたミュージカル『LIGHT YEARS -幾光年-』は、都倉俊一氏が作曲した作品で、長崎での被爆体験をテーマに取り上げています。このミュージカルは、主演に大原櫻子を迎え、また特別出演として松坂慶子が語り部として参加することで、観客の心に深く刻まれる印象を与えました。
作品の背景
このミュージカルは、89年からロンドンを拠点に活動していた都倉俊一氏が、日本人作曲家として初めてロンドンのウェストエンドにて発表した『OUT OF THE BLUE』に基づいています。彼は30年間にわたりこの作品を再構築し、被爆80年を契機として新たな形で発表しました。都倉氏の願いは、「長崎の物語を世界へ届け、未来への平和の祈りを東京から広める」ことです。
物語の核心
『LIGHT YEARS -幾光年-』は、原爆投下から80年の時を経て、四世代にわたる家族の物語を描いています。中心となるのは、長崎で被爆し、苦しみながらも命を運ぶことを選んだヒデコ(愛加あゆ)、その娘ハナ(坪井木の実)、そして孫娘ヒデミ(大原櫻子)です。この作品では、松坂慶子のナレーションによって物語が進行し、ハナがヒデミに過去の苦難を語りかける形で表現されます。
物語の中では、長崎の原爆によってもたらされた悲しみ、憎しみ、葛藤、そして和解が描かれます。ハナは亡き母ヒデコの想いを継ぐことで、自分自身と家族の絆を再確認していく過程で、「平和への祈り」に気づいてゆくのです。
強烈なメッセージ
都倉俊一氏は、「被爆体験を風化させることなく、平和への思いを未来に繋げていきたい」と語っています。このメッセージは、観客の心に強く響き、作品を観る者に思考を促します。特に、家族という存在が持つ力や、その絆が平和への願いと密接に関わっている様子が印象的です。
また、大原櫻子は主演として、二役を見事に演じ分け、その圧巻の歌唱力で観客を魅了しました。彼女の表現によって、ヒデミとハナのキャラクターが深く浸透し、物語に強い共鳴をもたらしています。
公演の詳細
このミュージカルは、2025年7月31日と8月1日にI'M A SHOW(有楽町マリオン 別館7F)にて、全3回のトライアウト公演が行われ、各回ともに観客でいっぱいに埋まりました。都倉氏による古い作品の新たな解釈や、現代の若者たちに向けたメッセージは、非常に意義深いものとして伝わりました。
本作をきっかけに、観客はその背後にある歴史を再考し、次の世代に引き継がれるべき大切なテーマについて思索を巡らせることでしょう。今後も、日本各地や海外での公演が計画されているとのことで、多くの人々に平和の尊さを伝えていくことでしょう。