舞台『十二人の怒れる男たち』の新たな表現と俳優たちの熱意

“法廷もの”として名高い『十二人の怒れる男たち』が、また新たな形で私たちの前に現れます。この傑作が3月26日から30日まで東京のサンシャイン劇場で上演されることが決定し、その準備が着々と進んでいるのです。

本作品の原作は、1954年に登場したアメリカのテレビドラマで、脚本はレジナルド・ローズが手掛け、後にヘンリー・フォンダの導入で映画化されたことで国際的に評価を得ました。この物語は、日本を含むさまざまな地域のクリエイターに多大な影響を与え続け、今なお世界各国で愛されている舞台作品といえます。

今回は、小田島恒志と小田島則子が新たに翻訳を手掛け、演出にはノサカラボの代表である野坂実が参加。この演出家はミステリー作品に特化した制作活動で知られ、「アガサ・クリスティ作品」や「神津恭介シリーズ」といった重厚な舞台から、巧妙で緻密なシチュエーションコメディに至るまで、その才能を広く発揮しています。

物語の背景

演目は、一つの殺人事件をめぐる陪審員室が舞台。殺人罪で告訴されたのは18歳の少年で、父親を殺した罪に問われています。裁判の行く先は厳しく、少年には死刑の可能性が高まる情勢です。12人の陪審員たちは全員一致での判決を求められ、最初の投票では11名が「有罪」とする中、一人の陪審員が異議を唱え、「無罪」の票を投じます。彼の呼びかけにより、陪審員たちは改めて証拠や証言の検証を始め、深刻な議論が始まるのです。

撮影の現場

今回のビジュアル撮影は、主に白のホリゾントが施されたスタジオで行われました。しかし、この撮影にはもう一つの特徴があり、アナログのオレンジ系の光が顔に斜めに当たる撮影ブースが設けられていました。この光は、陪審員たちが評議を重ねている熱い夏の西陽を象徴し、彼らの内面的葛藤を浮き彫りにするかのように感じさせました。

撮影では、デザイナーがカメラマンと共に演じるキャラクターのイメージを細かく議論し、それに基づいて役柄の持つ背景や職業、表情の向きまでも精査しながら進めていきました。俳優たちもまた、そのキャラクターを理解し、全体を把握している様子が印象的でした。

役柄への挑戦

最初に撮影されたのは、陪審員2番を演じる朝田淳弥。彼は銀行員という役をこなすため、渋い焦げ茶色のスーツを身にまとい、スタイリストの手がけたシャープな眼鏡が知的な印象を加えます。「2番は見た目とは異なり周囲をよく見ていて、周囲の期待に応えようとする不器用さがある」とデザイナーに言われ、撮影が進む中、思わず笑いを誘うような場面もありました。撮影後、朝田はその出来上がりに大きな期待を寄せている様子でした。

次に登場したのは小波津亜廉が演じる陪審員10番。彼は長身で、サスペンダーがよく映える、労働者階級を象徴する姿ですが、その性格は偏屈で怒りっぽい男。撮影中、アドリブで「有罪に決まってるだろ！」と叫ぶ場面もあり、その力強さが周囲を和ませました。彼は役の背景を十分に理解し、自身の表現に活かしていく様を見せつけました。

最後に富永勇也が存在感を放つ陪審員8番。彼は建築家という役からアースカラーのスーツ姿で現れ、その立ち姿は8番の揺るがない信念を表現していました。彼は、撮影後に「台本に描かれている8番のキャラクターをそのまま活かせた」と語り、自信に満ちた表情を浮かべていました。

副題とも言えるこの作品は、結局、陪審員制度の下で一人の命がどう扱われるかを描いた名作です。観客は彼らの内なる葛藤や、正義に達する道の難しさを目の当たりにし、感動を覚えることでしょう。俳優たちの強い取り組みが既に感じられる中、観客との感動的な出会いが待たれています。