セミナー開催の背景と目的
2026年4月21日、広島県情報プラザにて「智の伝承」セミナーが開催されました。このイベントは、ニュートンワークス株式会社主催により、エンジニアたちが集まり、次世代へ向けた「ものづくり」の精神を共有する場となりました。
元マツダロードスター開発主査であり、現在は山口東京理科大学の名誉教授である貴島孝雄氏が講演を行い、彼の豊富な経験と深い知識に基づく「温故知新」の考え方が参加者に強い影響を与えました。このセミナーは、技術革新の時代において、エンジニアがどのように知恵や経験を次世代へ伝え、さらなる進化を遂げていくのかを探る重要な一歩となりました。
貴島氏による講演内容
1. 動的クラフトマンシップの重要性
貴島氏は、マツダの代表的なコンセプト「人馬一体」について語りました。この概念は、単なる感覚的なものに収まらず、工学的なパラメータとして落とし込まれています。3代目ロードスターの開発に際し、ドライバーと車の一体感を実現するために、数値化されにくい感性的な要素にどのようにアプローチしたのかが示されました。特に、視界や操作に関する細部へのこだわりが、ドライバーに安心感を与えることが強調されました。このような精密な設計によってこそ、愛されるオープンスポーツカーが生まれたのです。
2. 感性価値についての視点
次に貴島氏は、製品開発における「感性価値」を重要視しました。この点について、元マツダ社長の山本健一氏が提唱した「自動車文化」の観点から掘り下げました。人が自動車を運転することで感じる喜びや達成感が、いかにホルモンとして脳内で表現されるかを解説しました。これは、製品を「単なる道具」から「文化」へと昇華させる過程であり、エンジニアリングにおける人間中心の設計が如何に重要かを示しました。
3. エンジニアへのメッセージ
セミナーの締めくくりとして貴島氏は、広島が持つ「飽くなき挑戦」の精神について触れました。戦後の復興から生まれたこの精神が、今のエンジニアたちにとってどれほど重要かを訴え、過去の経験から学ぶことの意義を強調しました。技術の先には常に「人間」がいることを忘れず、心を震わせる製品を作ることが求められています。
ニュートンワークスの提案
最後に、ニュートンワークス株式会社の田中友和が「考える設計CAE」という新たなコンセプトを紹介しました。セミナーで語られた人間中心の開発思想を、どのように実現していくかの具体的な方法が提案されました。特に、最新の技術を駆使して理想のデザインを導き出すプロセスが話題になりました。これにより、設計の効率が飛躍的に向上し、次世代のものづくりが加速します。
総括
このセミナーは、エンジニアたちが過去の教訓をもとに未来を切り拓くための貴重な場でした。貴島氏の講演を通じて伝えられた「智の伝承」の精神は、今後の技術者にとっての指針となることでしょう。知識と経験を基にしたエンジニアリングが、未来のものづくりを支える力になると信じています。