植野広生のエッセイ『父の棺に焼きそばを』
2023年7月22日に小学館から発売された、元「dancyu」編集長・植野広生の初エッセイ『父の棺に焼きそばを』。この本では、食を通じて家族の温もりや思い出を振り返りながら、日常生活の中での試練と向き合う姿が描かれています。
家族との絆
著者の植野氏は、父の胃癌が判明した際に、日々の食事の記憶が彼の心の支えとなっていることを伝えています。家業の焼きそば屋を継いだ父、料理上手でリウマチに苦しんでいた母との思い出は、彼の人生における大切な基盤です。家族で囲んだ食卓や、母が作った料理の数々が、いかに彼にとっての「普通の料理」であり、それが味わい深い思い出となっているかが物語られています。
食を通じた思い
食の雑誌「dancyu」の編集長として、「普通の料理」と「日常の味」を追求してきた植野氏。エッセイでは、彼がどのように食に対しての情熱を育み、またそれがどのように家族との絆を深めてきたのかを語っています。美味しさだけでなく、食を通じたコミュニケーションの重要性も強調されています。著者は「人は生まれることは選べないが、死に方は決められる」と語った父の姿を回想しながら、残された母への思いも胸に抱えて、食に挑む姿が描かれています。
ほろ苦さと滋味
「食べて、呑んで、ときどき介護」というタイトルに込められた思いは、家庭の中での食事がどれだけ大切で、時には苦い思い出もあることを示唆しています。しかし、そうしたほろ苦い経験が、著者の食への情熱をより豊かなものにしているのも事実です。このエッセイは食事をただの栄養として捉えるのではなく、人生の一部として捉え直すきっかけを与えてくれる一冊です。
おすすめの一冊
春風亭一之輔氏からも推薦を受けており、そのコメントは「植野さんの美味しい家族のはなし、涙ひとさじで塩味増し、賞味期限は永遠」と、まさにこのエッセイの狙いを如実に表現しています。家族の思い出や、料理への愛が込められたこの書籍は、読む人にとって心温まる経験を提供します。
著者の活動
植野広生は、栃木県出身で、法政大学卒業後、新聞社等を経て、2001年よりプレジデント社などで活躍。2017年から2023年まで「dancyu」編集長としての経験を経て、現在は文筆家、食のプロデューサーとして多方面で活動しています。特に「日本一ふつうで美味しい植野食堂」として、BSフジに出演中です。彼のこれまでのキャリアにおいても、食に対する真摯な姿勢が見受けられます。
今後のイベント
本の発売に合わせ、8月13日には紀伊國屋書店新宿本店でトークイベントも開催されます。著者自らが家族と料理の道をどのように歩んできたのかを直接聞ける貴重な機会です。
結論
『父の棺に焼きそばを』は、ただのエッセイではなく、食の記憶を通して家族の絆を再確認する作品です。食を愛し、その経験を大切にしている方々には、ぜひ手に取ってほしい一冊です。