次世代レーザーPCSELが切り拓く未来のセンシング技術と社会実装
スタンレー電気株式会社と京都大学、日亜化学工業の三者が共同で進めている次世代半導体レーザー「PCSEL」の研究が、新たな光技術の未来を切り開こうとしています。この技術は2024年から社会実装に向けた取り組みが進められ、その成果が2025年11月に英国スコットランドで開催される「International Workshop on PCSELs 2025」で発表されました。
PCSELの技術的進展
PCSELとは、フォトニック結晶面発光レーザーの略称であり、1999年に京都大学野田研究室で発明された画期的な技術です。このレーザーは高出力・高指向性・高機能性を兼ね備えており、その最大の特徴は発光サイズΦ1mmの素子から高指向性ビームを生成できる点です。これにより、従来の青色半導体レーザーが抱えていた「ビームの拡がり」と「輝度低下」という問題が克服され、指向性は従来の0.1~0.2度から0.05度以下に改善されました。これにより、大型レーザーと同等の高エネルギー密度が実現されることから、さまざまな分野への応用が期待されています。
例えば、この技術を利用することで、銅やアルミニウムなどの青色波長領域で光吸収率の高い素材の精密加工が可能になるとされています。これにより、製造業界での需要が高まることが予想されます。
水中センシングの新たな可能性
さらに、本研究では高指向性ビームを活用した水中センシングの有効性も確認されています。この技術を使えば、水中10m先の1cmレベルの物体を検知できることが理論上証明されており、従来の赤外光や音波では難しかった海中障害物の検知や、橋脚など水中インフラの検査、さらには海中資源の探査などの実用化が期待されています。
このような技術革新は、特に海運業界やインフラ関連産業において事故防止や効率的な資源探索を可能にし、これまでにはなかった新たな安全基準を提供することができます。また、自動車業界においても、雨天や濃霧といった視界不良環境下でのLiDAR(光検出と距離測定)への応用が見込まれ、従来の技術に比べて自動運転技術の安全性向上に寄与することが期待されています。
産学連携の重要性
この研究を進める中で、スタンレー電気と京都大学の日亜化学工業が果たす役割は非常に重要です。スタンレー電気と京都大学野田研究室はPCSEL素子の設計や評価、試作に関与し、日亜化学工業はその素子サンプルの試作と性能評価を担当しています。このように、産学連携による成果は、光技術の新たな可能性を切り開くカギとなります。
今後も、これらの取り組みを通じて次世代ものづくりやセンシング分野にさらなる貢献をしていくことでしょう。スタンレー電気のように歴史があり、技術力を持つ企業が新たな技術開発に挑む姿勢は、業界全体の未来を明るくする要素となります。
まとめ
次世代レーザーPCSELは、光技術の進化において重要な役割を果たす可能性を秘めています。今後の研究開発により、私たちの生活や産業に革命をもたらすことが期待されており、スタンレー電気、京都大学、日亜化学工業の共同研究はまさにその足がかりとなるでしょう。