メ~テレドキュメント、ABU賞受賞の快挙!
名古屋テレビが制作した「メ~テレドキュメント 救いの時差 ~ある小児がん医師の呻吟~」が、アジア太平洋放送連合(ABU)のテレビドキュメンタリー部門で最優秀賞に輝きました。この受賞は、国内外での子どもたちの命を救おうとする医師の努力を映し出した感動的な作品を評価した結果です。
受賞の背景と作品の内容
この名作が受賞した授賞式は、2025年9月14日、モンゴルのウランバートルで開催されました。メ~テレがこの部門でABU賞を受賞するのは、2011年の「メ~テレドキュメントヒバクコク~切り捨てられた残留放射線~」以来、2度目のことです。今回の作品は、命の大切さや、医療における倫理、そして国による医療の差を深く掘り下げています。
このドキュメンタリーは、名古屋大学病院の小児科医、高橋義行さんを中心に進行します。彼は、治療法が存在しない病気で亡くなる子どもたちを数多く見てきました。物語の重要なキャラクターである久保田ちひろちゃん(9)は、神経芽腫というがんに苦しんでいます。彼女は埼玉県から治療を受けるために名古屋に訪れ、一度退院もしましたが、4年後に再発が告げられてしまいました。彼女の病気は非常に治りにくい高リスク群に属し、国内では有効な治療法がないとされています。
ちひろちゃんが希望を見出したのは、イタリアで最先端の新薬が開発されたという情報です。しかし、日本ではこの薬は未認可のため、渡航せざるを得ませんでした。彼女と同じ病気を持つ髙橋結衣ちゃん(6)もメ~テレで取り上げられました。結衣ちゃんは、日本で新薬を待ち続けているものの、利便性の高い治療を受けることができずにいます。高橋医師は彼女たちを支えながら、国内での治療法開発に取り組んでいます。
高橋医師の挑戦と日本の医療体制
この作品は、高橋義行医師が抱える苦悩と、その裏にある日本の医療体制を明らかにしています。高橋医師は、イタリアと同様な治療法を研究していますが、国内で新薬を使うためには多くの障害が存在します。国や製薬会社、大学病院の様々な背景が、命を救うべき医療へのアクセスを制限しているという現実を表しています。
このドキュメンタリーは、視聴者に重大な疑問を投げかける内容となっています。「なぜ、日本で命が救えないのか?」と。この問いは、視聴者に深い思索を促し、同時に国ごとの医療の“時差”を身近に感じさせてくれます。
制作スタッフと受賞の意義
番組制作にあたった村瀬史憲プロデューサーや小澄珠里ディレクターは、その精緻な演出とストーリーテリングによって、他の応募作品から際立った評価を受けました。審査員は「メ~テレの『救いの時差』は真に世界水準に到達した数少ない作品の一つ」と絶賛。作品に対する高い制作価値や多様な視点を評価しました。
今回の栄誉に対する感謝の気持ちを表明した村瀬プロデューサーは、高橋医師の誠実な姿勢や、子どもたちの命の尊さが世界に伝わった結果だと強調しました。小澄ディレクターも、命の短さを痛感した結衣ちゃんの話を思い出しながら、より多くの人に新薬の開発の現実を知ってもらえるよう努める意義を語りました。
再放送のお知らせ
この感動的な作品は、2025年9月26日(金)午後1時45分から再放送予定です。地域限定放送のため、東海地方の皆さんはぜひご覧ください。公式ウェブサイトでも、見逃し配信が行われています。
命を救うための闘いを描いたドキュメンタリー。この作品を通じて、一人でも多くの命が救われることを期待したいです。