スポーツイベントを通じた地域経済の動向を探る
近年、スポーツイベントが地域に与える影響についての関心が高まっています。その中でも、株式会社NTTドコモと株式会社インテージは、共同で実施する実証実験を通じてJリーグクラブ「川崎フロンターレ」のホームスタジアム、Uvanceとどろきスタジアム周辺の経済効果を分析しました。この実験は、2024年3月1日から10月8日の期間にわたり行われ、スポーツイベントが地域経済にどのように寄与するかを明らかにすることが目的です。
スポーツと地域活性化の重要性
大型スポーツ施設は、スポーツ観戦の場を超えて地域の活性化やまちづくりの役割が期待されています。しかし、自治体などによる既存のデータでは、実際の経済効果を正確に測定するのは難しいのが現状です。このことから、地域の人流や消費に関するデータを用いた詳細な解析が求められています。
実証実験の立ち上げと目的
この実証実験では、ドコモの豊富な位置情報や決済情報、ユーザー属性情報を活用し、特定の場所や時間における来場者数や消費額の分析を行いました。スタジアム来場者の動向を評価することで、経済効果をより明確にする手法を模索しました。従来の方法では把握しきれなかった来場者層や消費の違いに関する新たな洞察が得られることが期待されています。
経済効果推定の手法
今回の実証実験による経済効果推定技術は、位置情報と決済情報を組み合わせた新たなアプローチを採用しました。この技術により、スタジアム来場者の行動を詳細に解析し、地域経済への影響を数値化することが可能となります。特に、来場者がイベント前後にどのようにその地域に滞留し、消費活動に結びついているのかを明らかにすることで、よりリアルな地域への影響を捉えました。
具体的な結果の一部
実証実験の結果として、スタジアム周辺の人流増加が試合前後で確認され、特にキックオフ前の1時間が最も人が集まる時間帯であることが判明しました。また、スタジアム来場者の1試合あたりの経済効果は2,419万円にも達し、来場者が滞留することで消費が大きく増加する傾向も示されました。
今後の展開
この実証実験の結果は、2025年6月27日に日本経済研究所によって詳細なレポートとして公開される予定です。さらに、この経験を活かし、他のJリーグクラブや地域のスポーツ事業者に対しても経済効果推定技術を展開する計画があります。これにより、各地域の活性化に寄与できるさらなる施策が期待されています。
おわりに
ドコモとインテージの連携によるこの実証実験は、スポーツイベントが地域にもたらす可能性を新たに示した取り組みです。地域や事業者が抱える社会課題を解決し、ビジネスの成長を支援するためのデータ解析技術がさらに進展することを期待しています。今後も、スポーツが持つ力を通じた地域振興に注目し続ける必要があります。