ロイヤル・オペラ『ワルキューレ』が映画館で体験できる新演出の魅力
2023年9月5日から、ロイヤル・オペラによる名作『ワルキューレ』が映画館で上映されます。これは、19世紀の音楽巨匠リヒャルト・ワーグナーが数十年をかけて完成させた壮大な四部作「ニーベルングの指環」の第2部として位置付けられています。今回は、著名な指揮者アントニオ・パッパーノと演出家バリー・コスキーによる新たな解釈が注目されています。
壮大な叙事詩と普遍的テーマ
『ワルキューレ』は、神々、人間、地底に潜むニーベルング族が織りなす情熱的なドラマです。権力、愛、裏切りといったテーマが複雑に絡み合うこの作品には、J.R.R.トールキンの『指輪物語』との類似点や違いがあります。ジャーナリストで音楽・映画ナビゲーターの石川了氏は、この作品が持つ普遍的なテーマ性に触れ、文学と音楽の調和を強調しています。
「初めて『ワルキューレ』を観る方でも、前作の『ラインの黄金』を観ていなくても楽しめる」と石川氏は保証しています。禁断の愛や家族間の葛藤といったテーマが感情豊かに描かれ、ストーリーも明快です。特に「ワルキューレの騎行」に代表される音楽は、観客の心を揺さぶります。
ライトモティーフの手法
石川氏は、ワーグナーが採用した「ライトモティーフ」という手法についても解説しています。これは、感情や状況を象徴する短いメロディが繰り返し用いられるもので、観客はそれを通じて物語への理解を深めることができます。この技法は、『スター・ウォーズ』シリーズの音楽にも見られるもので、音楽が物語の時間軸や人間関係を描写する革新的な要素となっています。
パッパーノとコスキーのコラボレーション
本作の音楽監督として、パッパーノはロイヤル・オペラの指揮者として22年の実績を誇ります。彼の指揮は歌手の声を最大限に引き立てる点で評価されており、オーケストラとの絶妙なバランス感覚もその魅力です。2025年5月には「桂冠指揮者」の称号が与えられる予定です。
演出を担当するバリー・コスキーは、環境問題からインスパイアを受けた新たな舞台構成を提案しており、特に故郷オーストラリアの山火事をモチーフに用いたことで注目されています。物語の視点は母神エルダ(ブリュンヒルデの母)にフォーカスされ、終末的な環境問題が新しい解釈につながっています。
豪華キャストの選定
出演者には、パッパーノとコスキーが厳選した実力派が揃っています。ヴォータンを演じるクリストファー・モルトマン、ブリュンヒルデ役のエリザベート・ストリッド、そしてフリッカ役のマリーナ・プルデンスカヤなど、名だたるキャストが集結します。特に、ジークムントを演じるスタニスラス・ド・バルベラクは、今後注目のテノールとして期待されています。
また、急遽代役としてジークリンデ役に抜擢されたナタリア・ロマニウも話題に。オペラは新しいスターが生まれる場であり、石川氏は『RBOシネマシーズン』の魅力を強く訴えています。
見逃せない上映情報
この『ワルキューレ』は、2023年9月5日から9月11日までの1週間、TOHOシネマズ 日本橋などで限定公開されます。その魅力的な音楽とドラマを、劇場で体感するチャンスをお見逃しなく。映像監督ピーター・ジョーンズによる映像美も見どころの一つです。
映画館で壮大なオペラを体験できる貴重な機会をお見逃しなく。
【STORY】
物語は、不幸な結婚をしたジークリンデと、敵に追われる男ジークムントの出会いから始まります。彼らは互いに惹かれ合いますが、ジークムントは実はジークリンデの生き別れた双子の兄だったのです。物語の果てには、禁断の愛と運命が待ち受ける…。
本作の詳細
- - 音楽・台本: リヒャルト・ワーグナー
- - 指揮: アントニオ・パッパーノ
- - 演出: バリー・コスキー
- - 上演時間: 5時間12分
公式サイト:
TOHOシネマズ
公式X:
RBシネマ
配給: 東宝東和