デンソーITラボが提案した異音検知モデルの革新
株式会社デンソーITラボラトリの研究者・太刀岡勇気氏が、2024年8月にフランスのリヨンで開催されるEuropean Signal Processing Conference(EUSIPCO 2024)において、教師なし学習を用いた異音検知モデルの新手法に関する論文を発表することが決まりました。この手法は、異常音を高精度で検出しつつ、学習にかかる計算量を大幅に削減できる点で注目されています。
研究の背景
異常音検知(Anomalous Sound Detection、ASD)は、特に工場などの製造設備において重要な技術です。機械から発せられる音が正常か異常かを識別する能力は、故障を早期に発見し、生産性を向上させるために不可欠です。しかし、現実の工場環境では異常音が頻繁に発生するわけではなく、また異常音の種類も多岐にわたるため、学習用データの収集が難しい状況です。そこで、教師なし学習を用いた手法が求められています。
従来の異音検知の手法は、対象機種の正常音から異常を判定するものが多いですが、それでは正常音のデータが不足する場合があります。本研究では、通常の機種の正常音もデータに追加し、異常音判定の精度を向上させる方法を提案しています。
提案手法の概要
太刀岡氏の提案する新しい手法では、対象機種の異常音判定において、他の機種の正常音を正例として学習させます。これにより、より多くのデータを効率的に利用することが可能になり、異常音検知の精度が向上します。また、提案手法では対象機種に類似した音を発する他の機種の正常音を活用することで、学習モデルのロバスト性も向上します。
この方法は、複数の機種に対しても適用可能で、ノイズの多い現場でも効果的に異常を検知できることが期待されます。特に、工場の多様な環境変数に対応するために、短時間でのモデル学習を可能にします。
研究成果と今後の展開
本研究によって、異常音検知の精度を飛躍的に向上させると同時に、データ収集にかかる時間や労力を大幅に削減することが実証されました。この成果は、工場や製造業だけでなく、自動車のメンテナンスにも応用可能で、運転中の異常音をタイムリーに検知するシステムの構築が期待されます。
さらに、デンソーITラボは、自社の技術を基にしたセンサーデータを活用した異常検知の実用化を目指し、今後も研究を進めていく計画です。これにより、より安心・安全なモビリティ社会の実現に貢献することが期待されています。
デンソーITラボラトリについて
デンソーITラボラトリは、デンソーグループが提供する先端基礎研究を専門とする企業で、深層学習や機械学習を駆使した技術開発を行っています。今回の研究もその一環であり、今後の技術革新が楽しみです。興味のある方は、ぜひ公式ウェブサイトを訪れてみてください。
デンソーITラボラトリ