スポーツボランティアが担う地域共助の新たな役割
近年、地域の結束力や支援体制の強化が求められる中、
スポーツボランティアの重要性が高まっています。特に、
笹川スポーツ財団が推進する「スポーツ・フォー・エブリワン」の理念のもと、地域住民がスポーツイベントを通じて互いに助け合う仕組みが注目されています。
研究概要
2024年から2025年にかけて行われた本研究は、「スポーツイベントをきっかけとした地域ボランティアの仕組みづくり」に焦点を当てています。調査対象としては、全国から6つの団体を選定し、半構造化インタビューと文献調査を通じて、地域のボランティア団体がどのように運営され、地域課題に貢献しているかを分析しました。
対象団体には、東京都の「まちだサポーターズ」、神奈川県の「チームFUJISAWA2020」や「川崎フロンターレボランティア」、宮城県の「市民スポーツボランティアSV2004」、山口県の「周南市スポーツボランティア」、石川県の「田鶴浜スポーツクラブ」が含まれています。
好循環モデルの検証
本研究では、スポーツボランティアの活動が持つ「入口(イベント参加)→ 活動の拡大・定着 → 出口(地域課題への貢献・波及)」という循環モデルを検証しました。このモデルから得られた主要な発見は、特に
活動の拡大・定着のフェーズが持続可能な地域共助の基盤を作る上で極めて重要であることです。
具体的には、先進事例に見られるように、行政や大学との連携、リーダーの育成、そして若者の積極的な参加を促す工夫が、ボランティア活動の継続性に寄与していることが確認されました。
地域ボランティア活動を持続的に発展させるためには
本研究が明らかにした持続可能なボランティア組織の構築に向けたキー要素は以下の4点です。
1. イベントが終了後も地域に根付く持続可能な仕組みの構築
2. スポーツを起点とした福祉・防災・教育など他分野との連携
3. 中核人材のリーダー及びコーディネーターを育成する環境づくり
4. 共通理念の明文化と共有、ならびに活動内容の定期的な振り返り
スポーツボランティアの連携モデル
さらに、本研究では、スポーツを媒介とした地域ボランティアの連携モデルの必要性が強調され、具体的な事例も紹介されています。特に、田鶴浜スポーツクラブでは平常時から形成されていた地域ネットワークが、災害時の迅速な支援につながった点が注目されます。
これにより、ボランティアが地域の防災や社会福祉活動と結びつくことで、日常生活と緊急時の支援体制が一体化した機能を持つモデルの形成が期待されています。
未来への展望
本研究の成果は、地域で活動するボランティアの組織形成や持続可能性についての具体的な知見を提供し、今後の政策検討の基礎資料としても利用される見込みです。スポーツボランティアが新たな共助の担い手として地域住民とのつながりを深め、地域課題の解決に向けた一翼を担うことが期待されます。地域住民の世代や分野を超えた協力が、新たな価値を生み出す可能性を秘めています。
本研究の詳細な報告書については、
こちらからご覧いただけます。