新潟医療福祉大学が発見したアスリートの心の疲労と髪の関係
新潟医療福祉大学の研究グループは、女子サッカー選手における髪の毛に含まれるホルモン分析を通じて、アスリートのメンタルヘルスの新しい調査方法を確立しました。特に注目されるのは、ストレスホルモンであるコルチゾールと、優しさや愛情を象徴するホルモン・オキシトシンの関係です。研究は2026年1月12日に国際学術誌「Frontiers in Sports and Active Living」に掲載されました。
研究の背景
アスリートはしばしば身体的なトレーニングと並行して精神的な疲労も抱えることがあります。実際、日々の厳しい練習により、「最近、調子が悪い」「気持ちがすっきりしない」と感じる選手は少なくありません。こうした心の不調は、体内での「ストレス」蓄積を示すサインかもしれません。アスリートにとって休息とトレーニングのバランスは重要で、過労や心理的ストレスが長引くと、パフォーマンスの低下や、最悪の場合、燃え尽き症候群に至るケースもあります。
このような背景の中、本研究チームは髪の毛に注目しました。髪の毛が成長する過程でホルモンが取り込まれる特性に着目することで、過去1ヶ月のストレス状態を明確に把握できる可能性があります。
研究の実施と方法
新潟医療福祉大学健康スポーツ学科の越智元太講師率いる研究チームは、女子サッカー部の選手22人を対象に調査を実施しました。2月と3月の2回にわたって、彼女たちの髪からホルモンのサンプルを取得しました。ここでは、ストレスホルモン・コルチゾールと社会的絆に関するホルモン・オキシトシンを測定し、同時にメンタルヘルス状態を調査しました。
研究によって得られた大きな発見の一つは、オキシトシンの増加が心理的苦痛と相関していることです。具体的には、オキシトシンが高い選手ほど、心理的な不安や落ち込みを感じている傾向が確認されました。これは、オキシトシンが慢性的なストレスに反応して分泌される可能性を示唆しています。
主な研究結果
この研究では、いくつかの重要な結果が得られました。まず、トレーニングの負荷と選手たちの疲労感が大幅に増加し、そのことがメンタルヘルスに影響を及ぼすことが確認されました。一方で、全体的なホルモンの平均値には大きな変化は見られず、個々の選手に着目することで新たな知見が明らかになりました。
1.
トレーニング負荷と疲労感の増加
オフシーズンから練習が本格化を迎える2月から3月にかけて、選手たちのトレーニング負荷は約2.5倍に増加しました。この増加に伴い、選手の間に疲労感も顕著に見られました。
2.
オキシトシンの増加が与える影響
調査の結果、オキシトシン濃度が上昇した選手ほど、心理的苦痛を感じやすいことが分かりました。
3.
ストレスホルモン間の独立性
コルチゾールとオキシトシンは、お互いに関連せずに変動することが示され、その両方を測定する必要性が強調されました。これにより、より正確なストレス状態の把握が可能となります。
未来への展望
本研究の成果は、アスリートの健康管理やパフォーマンス向上に寄与できる可能性があります。定期的な毛髪ホルモンの測定によってオーバートレーニングの早期発見が可能となるほか、選手自身が自覚していないストレスを見つけ出す手助けができるかもしれません。さらに、個別化されたトレーニングプランの作成にも役立つでしょう。
最後に、この研究は、女子アスリートの心のケアにおいて新たな視点を提供し、今後のスポーツ界におけるメンタルヘルスの重要性を再認識するきっかけを与えるものとなるでしょう。