本書の概要
落語家であり敏腕コメンテーターとしても知られる立川志らくが、新刊『現代お笑い論』を発表しました。本書は、新潮社の新潮新書から2025年12月17日に刊行され、立川志らくが考察する現代の「お笑い」の姿を描き出しています。著者は、ランジャタイやトム・ブラウン、霜降り明星といった90組の多様な芸人を取り上げ、幅広い視野でお笑いの本質に迫るものとなっております。
立川志らくの歩み
「全身落語家」を自称する志らくは、5年間にわたって若手芸人の登竜門として名高いM-1グランプリの審査員を務めました。オファーを受けた際には、自分が選ばれた理由すら理解できなかったと振り返る志らくですが、談志師匠の遺志を受け継ぐため、それを受け入れる決断をしました。多くの視聴者が志らくをコメンテーターとして知る中で、彼は自ら試練の場に臨みました。
M-1グランプリにおける初期の審査では、落語家の立場として大きな批判に直面します。「落語家が審査をする理由」とSNS上では苦情が殺到しました。それでも彼は持ち前の視点で「ぶっ飛んだ」漫才を称賛し続け、いつしか「志らく枠」という言葉を生むまでの評価を獲得しました。
志らく枠とは
本書の中では、「志らく枠」の存在が多く取り上げられます。「なんだかわからないけれど面白い」という形容は、志らくが厳選した漫才師たちの特徴的なスタイルを示すものです。本書では、特にイリュージョンが重要だと述べられ、師匠談志が提唱した「イリュージョン」とは何か、またそれがどのように芸人にとって必要不可欠な要素であるのかについても深く掘り下げられています。
M-1グランプリの影響
M-1グランプリは、島田紳助によって創設され、松本人志によって育まれたプラットフォームです。志らくは、M-1が笑いに与えた影響についても考察しています。90組の芸人を通じて、現代の「お笑い」に対する洞察が作者の筆により描かれています。
芸人たちの多様性
本書の魅力の一つは、落語家としての視点から、現代の幅広い芸人を分析している点です。霜降り明星や令和ロマン、さらにはダウンタウンやチャップリンに至るまで、多彩な人物たちが一冊の中で取り上げられています。それぞれの芸人のスタイルや面白さに対して、著者自身の鋭い視点で論評が展開されます。
【目次】
- - はじめに
- - 第1章 M-1論:全身落語家からコメンテーターへ
- - 第2章 イリュージョン論:落語とイリュージョンの関係
- - 第3章 喜劇映画論:チャップリンから見た喜劇
- - 第4章 レジェンド芸人論:イリュージョンの元祖を振り返る
- - 第5章 現代お笑い論:コンプライアンスと悪口の笑い
- - 第6章 お笑い徒然なるままに:キワモノたちの晩餐会
- - あとがき
結論
この『現代お笑い論』は、ただの芸人論に留まらず、笑いに込められた哲学や文化をも視野に入れた一冊です。志らくが紐解く現代お笑いの本質は、明るくも奥深いものがあり、読者に新たな視点を提供するでしょう。これは、現代のお笑いをライティングと批評の枠組みで存分に検証した一冊に他なりません。