現代社会を映し出す大前粟生の新作小説『物語じゃないただの傷』

大前粟生の最新作『物語じゃないただの傷』の魅力

大前粟生が放つ新たな小説『物語じゃないただの傷』が、2025年3月21日に発売される。この作品は、男のくせにフェミニストを名乗る主人公、後藤と“報われない男”白瀬の二人の男性の物語であり、現代社会の矛盾や構造を鋭くえぐり出す内容となっている。価格は税込1,892円で、期待が高まる一冊だ。

茶の間に持ち込まれる深刻なテーマ

本作は、ポリコレ（ポリティカル・コレクトネス）やフェミニズムに対する風刺的な側面を持っている。後藤は、メディアに登場し、男性性のあり方を告発する一方で、彼の行動の裏には自身の“傷”が隠されている。彼が語ることで、一体何が変わるのか。その問いかけが作品の根底に流れている。

白瀬は、そんな後藤の秘密を盾に、彼の家に住むことを強要する。二人の奇妙な同居生活がどのように展開していくのか、そして彼らが抱える問題がどのように描かれるのか、読者は目を離せないだろう。

超衝撃作としての側面

大前粟生はこれまでにも、ジェンダー差別に苦しむ男性の姿を繊細に描写し、批評的な視点を提供してきた。その成果が今回の『物語じゃないただの傷』に結実している。社会の問題を直視し、差別への抵抗や告発が如何に消費されるのか、鋭い分析がなされる。

吉田恵里香や大島育宙からの推薦コメントも話題を呼んでいる。吉田恵里香は「増幅していく差別と偏見と絶望を受け止めた先に、大前さんは一筋の光を導く」と述べており、作品の深さを称賛している。一方、大島育宙は「この物語が届かない時代なら、もう本当に手遅れだ」と警鐘を鳴らす。