中村鶴松が振り返る「野田版 鼠小僧」の魅力
4月4日(金)、全国34館で上映される「シネマ歌舞伎20周年記念『野田版 鼠小僧』」の舞台挨拶付き上映会が開催されました。この上映会には、歌舞伎俳優の中村鶴松が登壇し、作品にまつわる思い出を語りました。
「野田版 鼠小僧」は、演出家の野田秀樹と十八世中村勘三郎がタッグを組み、歌舞伎座で大人気を博した作品です。この作品は、シネマ歌舞伎の第一弾として2005年に初めて公開され、20年という節目を迎えることとなりました。鶴松はこの作品で重要な役どころである「孫さん太」に子役として出演し、その後、勘三郎に誘われ中村屋の部屋子としての道を歩むことになったといいます。
舞台挨拶での心温まるエピソード
上映会の開始時、鶴松は「今月30歳を迎えたばかりの“おじさん太”でございます(笑)」と観客の心を掴む自己紹介をしました。この言葉に会場は笑いに包まれ、彼の親しみやすさが伝わります。鶴松は「野田版 鼠小僧」の舞台での勘三郎との思い出を振り返り、特に感動的なエピソードを披露しました。
「カーテンコールの際に、毎回僕を抱きかかえてくれた勘三郎さん。あの瞬間、2000人の観客の目の前で舞台の中心に立つことができたのは、思い出に残る一コマです」と語る鶴松。この言葉から、彼の子ども時代の純粋さと、共演者への感謝の気持ちが伝わってきます。また、当時の緊張した場面で勘三郎が「芝居が良ければ、それでいいんだよ」と語ったエピソードも披露され、共演後に鶴松をスカウトするほど彼を評価していた勘三郎の姿が伺えます。
中村屋の兄弟たちとの絆
さらに、鶴松は中村屋の“兄”でもある勘九郎・七之助との交流についても触れ、「お前が鼠小僧の時が一番良かった」としょっちゅう言われることを明かしました。「当時はまだ若かったお兄さんたちが子役の僕を褒めるのが嫌だったんだろうな(笑)」と笑いながら語る様子から、彼らの仲の良さが伺えます。
古典作品の魅力と今後の展望
20周年を迎えるシネマ歌舞伎についても期待を抱いている様子で「古典作品をもっとやってほしい」と語りました。古典の演目には様々な細かい決まりがあり、それを客席から見るのは難しいため、シネマでの撮影によって観客が細かな部分を理解できるようになることを望んでいるとのこと。
最後に、「舞台を見てくださってありがとうございました。皆さんの存在が自分のモチベーションです。今後も中村屋をよろしくお願いいたします」と感謝の気持ちを伝え、上映会は終了しました。今回の上映会は、20年前の思い出を共有しつつも、未来への期待を感じさせる温かな時間でした。