ヴィム・ヴェンダースと幻のフィルム『ドリーム・アイランド』の復刻プロジェクト
最近、ヴィム・ヴェンダースの最新作『PERFECT DAYS』が世界中で高く評価されていますが、彼の過去の作品に再び光が当たっています。その名は『ドリーム・アイランド ーヴィム・ヴェンダースの失われた夢』。この劇場未公開アートフィルムの復刻プロジェクトが、国内最大のクラウドファンディング・プラットフォーム、MotionGalleryによって始まります。目標額は800万円で、2025年5月15日まで支援を受け付けています。
本作は、ヴェンダース自身が「一番好きな作品」と語る映画『夢の涯てまでも』(1991)のために制作された“夢のシークエンス”を元にしています。東京を舞台として、実際の生活が色濃く反映されたこの作品には、約100分間の夢のシーンが含まれており、厳選されたシーンをヴェンダースが自ら編集しています。また、彼が12歳の時に撮影した8mmフィルムを使用することで、より個人的な思いが込められています。
このフィルムは長年、観ることが難しい幻の作品とされてきました。『夢の涯てまでも』のレーザーディスクに収録された特典映像としてのみ公開されており、関係者やヴェンダースのファンの中でしかその存在が知られていなかったのです。
復刻プロジェクトの背景
このプロジェクトが生まれるきっかけは、御影雅良氏に届いた一通のメールにありました。2020年1月7日、ヴェンダースからのメッセージは、30年ぶりに『ドリーム・アイランド』を観たいというものでした。その流れから、御影氏は手元のVHSをヴェンダースに送り、この手紙が彼を再びこの作品に立ち返らせる要因となりました。
御影氏は、その後もプロジェクトの重要な一翼を担うことになります。彼の元に、仲田早織氏が現れました。彼女は『ドリーム・アイランド』の撮影監督を担当した故・仲田能也氏の娘で、幼少期に父と共に観たこの作品への深い愛着がありました。早織氏は、父がずっと残してきた映画に意義を見出し、再び公開されることを望む気持ちから、御影氏にコンタクトを取ったのです。
プロジェクトの詳細
この復刻プロジェクトでは、当初失われたと思われていたオリジナルテープや16mmフィルムが発見され、デジタルリマスターに向けた実行委員会が立ち上がりました。プロジェクトの目的は、失われたアート作品を現代に蘇らせ、幅広い世代にその魅力を伝えることです。資金の使途にはデジタルリマスター化や著作権者への支払い、キャンペーン運営費用などが含まれています。
支援者へのリターンとしては、オンライン試写会やオリジナルグッズ、試写会参加権などが用意されており、参加者はプロジェクトの一端を担うことができます。計画では、2025年6月にデジタルリマスター作業が開始され、同年12月にはオンライン試写会などが行われる予定です。
『ドリーム・アイランド』の魅力
『ドリーム・アイランド』は、恋人を失った女性の視点から描かれた夢の中の東京を舞台にしており、視覚的な美しさと深い感情が交錯する作品です。観る者にとっては、ただの映像ではなく、人生の意味や人とのつながりを考えさせる深いメッセージが込められています。このプロジェクトは、アートを愛する全ての人々にとっても重要な試みであると言えるでしょう。
ぜひ、彼の作品を再び世に送り出すための一助となり、圧倒的に美しい映像体験を共に楽しみましょう。
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