久留米空襲を再演する演劇「青色と灰色の境界線」
2025年の夏、福岡県久留米市で市民参加型の演劇『青色と灰色の境界線 -Inherit the heart-』が再演されます。本作は、2023年に初演された作品で、当時の空襲の悲劇を描きながら、未来を担う子どもたちに平和の重要性を伝えることをテーマにしています。
過去から未来へと繋がる思い
「青色と灰色の境界線」は、久留米市出身で東京在住の脚本演出家、林将平の手によって進化し、再演されることとなりました。今作は、戦後80年という節目の近い未来に、若い世代が中心となり、戦争の記憶を後世に残すため、地元の子役たちが主人公として登場します。出演者は、古賀桜花、柿添武蔵、池上八恵など、前回出演者に加え新たにオーディションで選ばれたキャストも参加し、ダブルキャスト形式で演じられます。
入部亜佳子が提唱する「次の世代へ“いのち”を繋ぐプロジェクト」は、戦争や命についての根源的な問いかけを行い、子どもたちに作品を通じて考える機会を提供することを目的としています。
空襲の日の記憶を辿る
公演は1945年の久留米市を背景に描かれ、主人公の八恵が当時10歳のときに経験した痛ましい記憶を通じて、戦争の惨状を語ります。青空にかかる灰色の雲、そして降り注ぐ鉄の雨。それらは、彼女の子供時代を奪った悲しみの象徴です。家族を失い、家を失い、大切なものを全て失った彼女が、今、孫とともにその記憶をどう語るのかが物語の中心となります。
「もういいかい?」と繰り返し聞く子どもの声は、平和の象徴でもあり、同時にその日の苦しみを思い起こさせます。この演劇は、戦争の悲劇をただ描写するのではなく、それが如何に人々の心に影響を与えたかを感じさせる場面が随所に散りばめられているのです。
市そして地域の取り組み
今年度の公演は、久留米市長の原口新五様からの応援を受けており、より多くの方に観ていただける機会を設けています。久留米市では「核兵器廃絶平和都市宣言」を行っており、その理念に理解を示す形で、演劇を通じて平和への思いを伝える活動にも力を入れています。また、ロビーでは久留米空襲や市の歴史に関する資料展示も行い、訪れた人々がその歴史を学ぶきっかけを提供します。
公演概要
公演は2025年8月13日から15日まで、久留米シティプラザで行われます。チケットは全席指定で、大人2,800円、小中高校生1,000円と、幅広い層に楽しんでもらえる設定です。演出の林将平の丁寧な脚本と、出演者一人一人の真剣な演技で、観客に深く心に残る体験を提供することを目指しています。
若い世代が中心となったこのプロジェクトは、単なる演劇にとどまらず、観る人すべての心に平和のもたらす影響を考えさせる作品であると確信しています。久留米の地に根付いたその心の叫びが、観客に届くことでしょう。さあ、平和への祈りを込めて、新たな舞台を観に行きましょう。