未来を切り拓く技術力
東京都足立区に位置する『株式会社ナカザ』は、深絞り加工の技術で業界の最前線を走り続けています。創業から約40年の歴史を持ち、今や世界中で高い評価を受けている同社が、どのような挑戦を経てここに至ったのかを探ります。
匠の技が織りなす製造の裏側
ナカザが手掛ける深絞り加工は、一枚の金属板を金型で圧縮し、様々な形状に整形します。この技術は、一見シンプルに見える製品にも、世界最高水準の加工技術が不可欠です。特に、18社が断念した難易度の高い計測器ケースの製造に挑戦し、2年の試行錯誤の末に成功を収めました。
この計測器ケースは、厳格な設計に基づいて製造され、底面の平坦度はプラスマイナス0.2mmという精密さが要求されたため、他社が手を出せなかったのです。しかし、ナカザはその技術力を駆使して、2011年に見事な完成を成し遂げ、世界的な展示会で絶賛されました。
深絞り加工技術の真髄
金属加工における“深絞り”は、金属板に施す圧力や潤滑の選定など、多様な専門知識と経験が求められます。特に、ナカザの得意とする「特殊形状深絞り」は、円や四角だけでなく、3D形状を一体成形することができる高度な技術となります。この製造プロセスには、金型設計から表面処理に至るまで、一貫した社内生産体制が寄与しています。
革新製品の数々
ナカザの技術力が育てた製品は多岐にわたります。その代表例は、世界最小・最軽量の双眼鏡です。この双眼鏡は、深絞り技術を駆使し、従来品の半分以下の大きさと重量を実現しました。皇室からも支持を受け、その精密な加工技術が広く認められています。
医療分野でも高い成果を上げており、体温計部品の製造では、直径2mmという極小サイズを求められ、厚さ0.2mmの金属板を使用した製品を成功裡に生産しています。これは、特殊な金型と独自の技術が融合した結果です。また、自動車産業においても、ハイブリッドカー用の燃料電池のケースを日本で初めて開発した実績があります。
ナカザの強み
ナカザが選ばれる理由の一つは、全工程を社内で一貫して行う姿勢にあります。金型設計から製造まで、自社で徹底した品質管理が行われ、その結果として高精度な製品が安定して供給されます。また、40年以上に及ぶ高難度の絞り技術の蓄積が、他社に比べて一歩先を行く要因となっています。
さらに、小ロット生産から大量生産まで、柔軟な生産体制を整えており、最新の技術を取り入れた試作にも積極的に対応。制約を受けることなく、高いコストパフォーマンスを実現しています。
創業者のストーリー
中座義行代表は、自身の経歴からこの会社をスタートさせました。営業マンとしての経験は、製品の立ち上げに役立ちました。周囲の工場を訪ね歩き、技術を学ぶ姿勢が、ナカザの基礎を築いていったのです。
「創業当初は知識も経験もなかったが、挑戦することが大切だと感じた」と語る中座氏。彼の哲学は、組織全体に浸透し、現在も続いています。厳しい経営環境を乗り越えた先に、ナカザの明るい未来があります。
今後も次世代の技術者を育成し、匠の技を継承していくことに力を注いでいるナカザの挑戦は、これからも続くのです。
ナカザは「足立ブランド」に認定されており、その高い技術力と製品は足立区の誇りであると共に、多くの企業にとってのロールモデルとなっています。今後の更なる発展に目が離せません。