音・振動解析の実務適用セミナーで新たな知見を得る
2026年6月5日、名古屋にてニュートンワークス株式会社主催の音・振動(NV)解析セミナーが開催され、音や振動についての専門的な知識が求められる設計・CAE技術者たちが集まった。その基調講演には、元豊田中央研究所、ソニーで活動してきた井戸浩登氏が登場し、音・振動問題の深層的理解について説明を行った。
基調講演:評価指標による原因特定
井戸氏は自身の豊富な経験に基づき、音・振動問題の根本に迫るためには「入力」と「伝達特性」をしっかりと分ける必要があると強調。その理由として、実際の製品が示す音圧はさまざまな要因の混在によるものであり、単純に測定値を比較する方法では問題の本質にたどり着けないことが多いと説明した。ここで提案されたのは、要因を正確に異なる形で切り分けて評価する手法だ。加振実験や伝達関数を用いたアプローチは、設計者が操作できる形状や材料の特性を評価する上で非常に役立つとされている。
具体的な評価指標としては、音響インテンシティ、音響放射効率、振動が音に与える寄与度などが挙げられた。特に構造表面の振動特性に関して、複雑な位相や分布が音に与える影響について詳述。「単純に振動の強さを測定するだけではなく、位相や放射効率を考慮することが重要である」と井戸氏は力説した。
実験データの信頼性を確保する技術
続いて、井戸氏は実験データの信頼性に関する信号処理技術についても言及。 Cross-Spectrum法や各種の窓関数、Overlap処理等が、実測時のノイズを低減させるための有効な手段として紹介された。また、システムの非線形性を確認するためのヒルベルト変換を利用した計測データ評価の重要性も強調された。これらの知識は、CAEと実験との整合性を持たせるために必須である。
構造最適化の実機検証
次の発表では、ニュートンワークスのCAE総合開発センターから、構造最適化がNV対策にどのように寄与するかについて検証結果が発表された。「ノンパラメトリック形状最適化」は、理論上音や振動を大幅に低減できるというが、実際の機械での効果がどの程度かという疑問が多く、実証実験が求められている背景がある。
この検証では、株式会社くいんとが開発した「OPTISHAPE-TS」を使用し、金属3Dプリンターで作成した試験片の実験結果とシミュレーションデータとの比較を行った。最終的には、最適化前後のデザイン間での具体的な効果を報告した。
システム全体でのNV最適化
さらに、回転機システムにおけるNV解析手法についても解説があり、逸脱したモデルを使用して各要素の相互影響についての解析が行われた。スイスのMESYS社の軸受設計計算ツールを利用し、多様な設計改善手法が音や振動の低減に役立つ可能性が示された。
結論:体系的なプロセスの重要性
セミナーのまとめとして、評価指標による原因特定、実験と解析の整合性の確保、システム全体での最適設計という一連のプロセスが示された。特に井戸氏の講演を通じて、音・振動問題を理解するための体系的なアプローチが設計現場での解析活用の指針となったことが印象的であった。今後もニュートンワークスは、NV解析に関するセミナーを定期的に開催し、技術者のスキル向上に貢献していくことが期待される。