日本のエリートアスリートが語るCOVID-19感染と復帰の実態分析

日本のエリートアスリートにおけるCOVID-19と競技復帰の実態

日本のエリートアスリート994名を対象とした調査により、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）が選手たちの競技復帰に与える影響が明らかになりました。この研究は、独立行政法人日本スポーツ振興センター（JSC）と筑波大学の中田由夫教授との協力によって行われました。2022年から2023年にかけて、メディカルチェックを受けた選手たちのデータを基に後方視的に分析されており、特に屋内競技における感染の実態が浮き彫りになりました。

主な調査結果

調査の結果、994名中456名がCOVID-19に感染したことが確認され、特に第6波（オミクロン株が主要株）での感染が多かったことが特徴です。競技別に見ると、バドミントン、バレーボール、ハンドボールといった屋内競技の選手が特に高い感染率を示しました。

感染症状は、発熱が中心で、咽頭痛や咳嗽も見られましたが、約11%の選手は無症状でした。興味深いことに、発症から競技に復帰するまでの中央値はおおよそ10日であり、約90%が14日以内に復帰しているという結果が得られました。長期的な離脱（28日以上）は4%にとどまりました。これは、オミクロン株の流行以降、復帰が遅れる傾向が少なかったことを示しています。

詳細な分析

屋内競技アスリートの感染率が高い理由としては、長時間にわたる密接なトレーニング環境や、近くでの運動が感染のリスクを高めた可能性が考えられます。また、オミクロン株の影響が見られる第6波以降は、行動制限が緩和され、感染管理の改善がなされたことも影響していると考えられています。

この研究の結果は、エリートアスリートがCOVID-19に感染した場合における復帰の実態を示す重要な知見を提供しています。今後は、感染後の外傷リスク評価や、個別化された復帰プログラムの検討が求められます。

今後の展望

この調査を基に、競技種目やトレーニング環境に応じた感染管理方法や、段階的な競技復帰プログラムの最適化が必要です。個々の選手に対する支援は、ワクチン接種の状況や基礎疾患を考慮した個別化されたものであるべきです。これにより、アスリートたちが安全かつ効率的に競技に復帰できるための道が開かれるでしょう。

本研究は、公益財団法人ミズノスポーツ振興財団からの助成を得て行われ、スポーツ医学や科学研究の分野において貴重な資料となることが期待されています。今後のアスリートの健康管理や競技復帰に関する方針に貢献することを目指しています。