没入型XR作品『Nox』がIFFR指定の新プラットフォーム「Lightroom」に選出
日本のメディアアーティストであるナカダリオが手がけた没入型XR作品『Nox』が、2026年にオランダ・ロッテルダムで開催される国際映画祭IFFRの新部門「Lightroom」に公式選出されました。この重要なイベントは、没入型のストーリーテリングを創出するための新たなプラットフォームとして位置づけられています。選出を喜ぶナカダリオ監督は、自身のC-PTSD体験を基にした作品であり、心理的テーマを深く掘り下げています。
Lightroomとは
Lightroomは、XRやVR、インタラクティブな表現を持つ作品を対象にした国際的な制作マーケットで、これまで別々に扱われてきたWorks-in-ProgressやWorks-in-Developmentを統合しました。この新たなプラットフォームは、開発支援や国際交流を目的として設計されており、映画祭が開催されるKatoenhuis(カトーンハイス)で多様な専門家が集結し、シンポジウム「Reality Check」も併催される予定です。
2026年の初開催では、世界中から選ばれた9作品の中に『Nox』が名を連ねており、Works-in-Progressとして発表されます。この作品は、観客にトラウマや社交不安、解離といったテーマを探求する体験を提供します。
作品の概要
『Nox』は、観客がトラウマを抱えるティーンエイジャーの内面的世界に足を踏み入れる没入型のXR物語です。観客は、記憶の揺らぎや感覚の歪みを体験し、キャラクターの不安定な心情を味わうことができます。この深い心理的なテーマは、ナカダリオ監督自身の過去の経験から生まれたものです。
制作背景と協力
本作は、経済産業省のクリエイター支援プログラムを受けて制作されています。映画祭期間中には、欧州のプロデューサーやテクノロジスト、キュレーターらと共同制作や技術連携の交渉が予定されています。
ナカダリオ監督は「私のC-PTSD体験に基づき、死や不条理を内面から可視化したいと思っています」と語ります。彼女は監督、脚本からモデリング、美術、音響と多くの工程に携わる中、時にはバーを高くする困難に立ち向かいながら、作品の完成を目指しています。
受賞の喜びと期待
ナカダリオ監督は、今回の選出を「世界的な映画祭での公式マーケットに参加することは非常に光栄です」とし、この作品を通じて観客に深い体験を提供することへの意欲を表明しています。また、専門家たちも彼女のこの挑戦に高い評価を寄せています。
藤井直敬氏はその感動を「彼女の作品が持つ力を改めて認識させられる」と称賛し、落合陽一氏も「ナカダリオさんの成長を見守ってきた」と伝えます。
日本からの誇り
IFFRは、1972年設立以来、特にアジア映画に焦点を当てており、日本の映像作家にとっても注目すべき舞台です。この映画祭への選出は、日本からの新しい才能が国際的に評価されることを示すものでもあります。
『Nox』が世界中の観客にどのような体験を提供するのか、今後の展開に期待が高まります。完成版は2026年春以降に国内展示が予定されています。
作品『Nox』は、まさに新たなデジタル表現の可能性を示すものであり、今後の活動から目が離せません。