2025年度ピティナ・ピアノコンペティション特級ファイナルレポート
2025年8月22日、東京のサントリーホール大ホールで行われたピティナ・ピアノコンペティション特級ファイナルが熱気に包まれました。このコンペティションは、日本国内外の若手ピアニストが腕を競い合い、例年、多くの観客を集めています。今年も約3万人の参加者の中から、特級のファイナリストに進んだのはわずか4名。その中でのグランプリ受賞者が誕生したことは、多くの関心を集めました。
当日のファイナルでは、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の指揮を大井剛史氏が務め、ファイナリストたちは見事なピアノ協奏曲を演奏しました。登場順は、加藤皓介さん、高見真智人さん、津野絢音さん、そして最後に稲沢朋華さんの4人。彼女は香川県三豊市出身で、桐朋学園大学の4年生です。
稲沢さんが演奏したのは、ベートーヴェンの《ピアノ協奏曲第3番》。彼女の演奏は豊かなアンサンブルとともに、聴衆の心を惹きつける表現力でスタンディングオベーションを受けました。発表された結果、稲沢さんは見事、グランプリに選ばれ、さらに聴衆賞とオンライン聴衆賞も同時受賞しました。トリプル受賞は大変珍しく、その実力がいかに高かったかを物語っています。
今年のコンペティションには、合計30,066名が参加。特級の部には115名がエントリーし、数段階にわたる厳しい審査を経て選ばれたファイナリストたちがしのぎを削りました。特級ファイナルで演奏するために選ばれること自体が、ピアニストとして大きな名誉です。
ファイナル当日、サントリーホールのチケットは前日に完売し、約1,800名が会場に集まり盛大なセッションが行われました。さらに、南杏佳さんの特級活動報告会も同時に行われ、昨年度のグランプリ受賞者が活動を振り返り、今後の展望を語る貴重な場となりました。
ピティナ・ピアノコンペティションは、年齢制限のない特級クラスにおいて、音楽家としての在り方を問いかけるだけでなく、国際的な舞台での活躍を目指す若手の登竜門となっています。これまで多くの優れたピアニストを輩出しており、その中には国際コンクールでの受賞者や著名な演奏家も多数含まれています。コロナ禍以降はオンライン配信も行われ、多くのリスナーに支えられる形となっており、地域での活動や教育への貢献も重視されています。
今後、室内楽も導入され、ますます多様な表現力が求められるようになった特級。全国から集まる若手ピアニストたちの情熱と挑戦が、次代の音楽シーンを支えることに期待しています。稲沢朋華さんの今後の活躍にも大注目です。