舞台芸術の革新を支える丸茂電機の調光装置
2023年、舞台芸術の分野で初めて、丸茂電機株式会社の製造した舞台照明用調光装置が重要科学技術史資料、通称「未来技術遺産」として登録されました。これにより、舞台照明用機器の歴史が科学技術史の観点から本格的に評価されることとなります。登録されたのは、戦前に作られた以下の3種の装置です。
- - U 型多分岐式調光変圧器(東京宝塚劇場納入)
- - U 型多分岐式調光変圧器と調光操作盤(京都弥栄会館納入)
- - CR型変圧器式調光装置(京都弥栄会館納入)
舞台芸術分野において、これらの機器が初めて未来技術遺産として認定されることには、非常に大きな意味があります。舞台照明は、演出や表現において重要な役割を果たしていますが、その背景には個々の装置の歴史が存在します。これまであまり知られていなかったこれらの舞台照明用機器の重要性が、再評価される契機となったのです。
1. U 型多分岐式調光変圧器
1933年に製造されたこの装置は、東京宝塚劇場の舞台照明設備の主要な構成要素として採用されました。この多分岐式調光変圧器は、電圧を分割しそれぞれの調光回路を一つの変圧器で受け持つことを可能にしました。これにより、従来の抵抗器式調光装置に代わり、電力損失を抑え、より効率的な調光が実現されたのです。
また、東京宝塚劇場は1934年に開場し、その設計は欧米の劇場の優れた点を取り入れたものとなっています。舞台と客席の距離を意識した照明操作室の配置など、現在の舞台照明のスタイルを確立する上での先駆けとなりました。丸茂電機は、この先進的な技術を提供したことで、舞台演出の質を向上させる大きな役割を果たしました。
2. U 型多分岐式調光変圧器と調光操作盤
1936年に製造されたこの装置は、京都の弥栄会館に納入され、近年まで使用されていました。この装置は、手動・電動両用として製造されており、昔ながらの操作方法を知る貴重な資料となっています。両方の装置が揃って現存することから、その歴史的・技術的価値は非常に高いとされています。
3. CR 型変圧器式調光装置
同じく1936年に納入されたCR型変圧器式調光装置は、電圧の調整が非常にスムーズで、光の明暗を安定して調節できる特長を持っています。この装置は現在でも調光が可能な状態で保存されており、舞台照明技術の進化を物語る重要な資料です。
未来技術遺産登録の意義
これらの機器が未来技術遺産に登録されることにより、日本の舞台芸術の技術史が一層深く知れ渡ることが期待されます。舞台設備は一見地味に映りますが、実際には演出や観客体験に直結する非常に重要な存在であり、その進化の背後には、多くの技術者たちの努力があります。
丸茂電機の誇り
丸茂電機株式会社は1919年に設立され、以来舞台照明の分野で日本の文化を支えてきました。日本各地の有名な劇場に照明装置を提供し、舞台演出を支える技術を磨いてきました。今後もその技術を生かし、文化芸術の発展に寄与していくことが期待されます。未来技術遺産に登録が行われたことは、その重要性を広く知らせる重要な機会でもあります。舞台芸術の背後に潜む技術の魅力を、今後も多くの人々に伝えていきたいものです。