中国企業吉利、スーパー燃料の量産化で自動車業界に革新をもたらす
中国企業吉利、メタノールが切り拓く自動車産業の未来
中国の自動車メーカーである吉利汽車(Geely Auto)が、ネットゼロ排出を実現する「スーパー燃料」として注目されるメタノールの量産化に成功しました。この革新的な取り組みは、2025年2月7日にハルビンで開催される第9回アジア冬季競技大会で、吉利が提供する350台のメタノール駆動サービス車両において初めて大規模に導入されます。メタノール車両が国際的なスポーツイベントで本格的に採用されるのは、これが初めての試みです。
吉利が提唱するメタノールは、クリーンで持続可能な燃料として多くの注目を集めています。この燃料は水素と酸素を含むもので、高効率で燃焼し、排出物も少なく済むことが特徴です。もし中国国内の自動車の3分の1がこのグリーンメタノールを使用すれば、石油輸入を8000万トン削減し、1億3200万トンの二酸化炭素を減少させる効果が見込まれます。
さらに、吉利は最近、「吉利カーボンボールト」という新たな技術を開発しました。このシステムは、車両からの二酸化炭素をリアルタイムで回収し、独自のCO₂水素化技術を利用してグリーンメタノールに変換します。このプロセスによって、メタノール駆動車両の燃料をまかなうとともに、二酸化炭素のリサイクルを実現しています。その結果、車両の排出量を大幅に削減し、ほぼゼロに近づけることが可能になるのです。
吉利は、2005年からメタノールの開発に力を入れてきました。ハルビンでの大会に向けて、メタノール車両の実用化による信頼性の証明が進んでいます。過酷な環境、つまり氷点下20℃でのテストでも、迅速な始動と高い安定性を証明しました。日本の自動車メーカーたちも電動化を進め、変革に取り組んでいますが、中国がメタノール燃料技術のリーダーとして台頭してきたことは警戒を要する問題です。
過去、30年以上前に日本が発表したメタノール燃料に関するコンセプトカー「NRV-II」は記憶に新しいですが、今や中国企業がその先を行っています。中国ではゼロエミッションの新エネルギー車の量産化が進んでおり、日本はこの急速な追随に警戒感を強めなければなりません。
今回のアジア冬季競技大会でのメタノールエネルギーの大規模導入は、国際的な環境意識の高まりを示し、次世代の「スーパー燃料」としてメタノールが自動車産業を変革する力を秘めていることを示しています。中国が石油依存から脱却するための一歩を踏み出している今、日本もエネルギー技術分野での競争心を強める必要があることでしょう。メタノールがもたらす未来の交通手段としての可能性を見極めながら、さらなる技術革新が求められます。