競馬ミステリーの新たな幕開け
イギリスの作家ディック・フランシスの名作シリーズが新たに息を吹き返します。彼の息子、フェリックス・フランシスが手がける新作『覚悟』が、5月8日に文春文庫から発売されます。この作品は、かつての作品で人気を誇ったシッド・ハレーが主人公として再登場する、待望の『新・競馬シリーズ』の第一弾です。
シッド・ハレーの物語
『覚悟』の物語は、左手をなくした元騎手シッド・ハレーが、競馬界で最高の調査員として名を馳せた日々から始まります。事故から時間が経ち、彼は妻子と静かな生活を送っていましたが、ある日、競馬界の重鎮スチュアート卿から不正の疑惑に関する相談を受けることになります。最初は依頼を断ろうとしますが、次の日に卿が変死するという事件が発生。果たしてハレーは自らの判断を後悔することになるのでしょうか?
この物語は、ハレーが真相を追い求める中で直面する様々な危機や、彼を取り巻く敵の陰謀が描かれています。力強く進む彼の姿勢に、多くの読者が胸を打たれることでしょう。名作『大穴』『利腕』で活躍したシッド・ハレーが、新たな冒険に乗り出す姿は大いに期待が寄せられます。
ディック・フランシスの競馬シリーズの魅力
ディック・フランシスは、イギリスの名騎手で、引退後にサスペンス小説の執筆を手がけました。その結果、44作にも及ぶ競馬をテーマにした作品群が誕生し、多くのファンに支持されました。彼の代表作には、八百長トリックで読者を驚愕させた『興奮』や、ダガー賞とエドガー賞を同時受賞した『利腕』などがあります。
フランシスは2010年に亡くなるまで、その作品は世界中で愛され続け、推理小説界に多大な影響を与えてきました。しかし、彼の作品は単なるエンターテイメントにとどまらず、深い人間ドラマや心理描写が織り交ぜられたものでもあり、読み手に思考を促す作品でもあったのです。
フェリックス・フランシスの挑戦
ディック・フランシスの息子、フェリックスは、父の足跡を辿りながらも独自のスタイルで物語を構築しています。父の最後の4作品を共に執筆した経歴を持つフェリックスが、どのように新たな挑戦を繰り広げていくのかは大きな関心事です。『覚悟』は、彼の独自の視点が存分に生かされた作品であり、シリーズのファンはもちろん、新たに競馬ミステリーの世界に足を踏み入れようとする人々にも魅力的な一冊となることでしょう。
背表紙デザインに込められた思い
本作の背表紙は、父のシリーズに敬意を表して緑色にデザインされています。文春文庫の海外ミステリーとしては初めてとなるこの緑色は、彼の競馬シリーズを愛する読者にとっても親しみのあるもので、書棚に並べても違和感のない仕上がりです。この美しいデザインは、書籍としての魅力も引き立てており、手に取る楽しさも増しています。
書誌情報
- - 書名:『覚悟』
- - 著者:フェリックス・フランシス
- - 翻訳:加賀山 卓朗
- - 装丁:関口 聖司
- - 判型:文庫判
- - 定価:1,265円(税込)
- - ISBN:978-4-16-792370-9
- - 書誌ページURL:文藝春秋
『覚悟』は、今後の競馬ミステリーの新たな基盤となるかもしれません。ハレーの活躍に期待しつつ、その背後に潜む真実を追い求める物語を、ぜひ楽しんでください!